お袋や爺さんが「お前はまるで河童だ」と呆れ半分で笑うくらい。
浮き上がる感覚や纏わりつく感覚がどうしようもないくらいに心地良く感じられた。
スタート台に構え、縁に引っ掛けた足の指に力を込めて倒れこむように委ねるように、その世界へ。
飛ぶ瞬間は気分を高揚させる。
わかるかな?
人の耳は、水が入りにくいような構造になってる。
遠くさんざめく様なエールが聞こえる中、俺は俺の命の音を水の中で聞いている。
そんな特別な世界を、愛していた。
ごぼごぼ、というこのくぐもったような響きは空気が水から逃げる音だ。
腰を引いたらだめだ、息ができなくなるから。
ふと、背泳ぎを覚えたばかりの頃の事を思い出す。
人は怯えると思わず腰を引いてしまう。
ガキだった俺は水の中仰向けに横たわって無意識に何かに怯えたのか、どうしてもうまく身体を浮かせることができなかった。
胸を張って浮力に任せることは、いつ覚えたんだっけ。
腰を浮かせようとしたら踵が濡れたタイルの上を滑った。
本能が動かす手が縁を掴もうとするのを、細く冷たいそれに阻まれる。
それがどんな形なのか、俺はよく知っていた。
左の薬指を3年前の誕生日に贈った白金のリングが飾っている筈だ。
小さな石のついたその指輪は、今年の誕生日には何の飾りもない、けれどもっと大切なものに居場所を譲る予定だった。
―こんな風に爪を伸ばすのも、もうやめにしなきゃね
はにかみながら俺に見せてくれた、ピンクのグラデーションを描くネイル。
その爪は今、俺の肩に食い込み…。
「…い…るのよ…」
うまく聞こえない。
これは、なんだ?
そういえばさっきお前、何回も言ってたよな。
まだ繰り返してるのか?
知ってるよ。
なんで、泣くんだ?
「愛してるのよ」
知ってるって。
俺だってお前の事、愛してる。
空気が暴れる。
視界の隅に、綺麗に整えられた爪を乗せた指が見える。
ゆらゆらとぶれた形のまま、網膜に焼き付いてゆく。
ザーザーザーザー…砂嵐だけを映すテレビのような音が、段々遠くなっていく。
この音はなんだったろうか。
ああ。
俺の、命の、おと、だ。
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という夢を見ました。
という夢を見ました。
たまにこういう設定付きの夢を見るんだけど、今回はアレか?
…ヤンデレ婚約者に溺死させられる水泳選手の役か?
突拍子もない設定で主人公にしてくれるもんです。
ちょっと前に全く現実にはなかった特番ドラマをみている夢を見て、あまりにもリアルだったもんで思わず友達に「なぁ、あいつら特番でドラマやるとかいう話、なかったよね?」と確認した事もある。
妄想力は結構馬鹿にできないよ(笑)?
夢の世界で小説のネタが見つかる、みたいな話あったな、としばらく考えました。
この本に入ってる短編です。
作家小説/有栖川有栖
うちにあるのはハードカバーの方だけどね。
久しぶりに読み返すかな。
それよりもまだ買ってない乱鴉の島を買わなきゃ。
日頃はあんまり本読まない人ですよ…。


